路地裏の空

創作日記・乱調随筆

梅便り(弍)ー 春は名のみの風の寒さや

庭の小さな梅の枝で戯れている鳥を撮った。

 毎年、この時期になると、梅の花とか根元に置いたミカンを目当てにやってくる。ミカンは去年までは隣に住む母親が置いていた。動物が好きではない人だが、どういうわけか、雀にコメを播いてやったり、野鳥に果物を置いてやったりする。私が野良猫に餌をやると露骨に嫌な顔をするのに。

 この時期この地域にやってくる鶯色のこの鳥を私はずっと鶯だと思い込んでいた。だって「うぐいすいろ」じゃないか。この季節のイラストといえば梅に鶯だし、花札だって梅には鶯だろ。でも、やってきて梅の枝で戯れる彼らが、例の「ほうほけきょ」と啼くのを聞いたことがないので妙だなとは思っていた。そして昨年、「あれはメジロだよ。目の周りが綺麗な白だろ。」と言われて、ついにホントのことを知った。

 で、今年はこの写真を撮ってみるに至ったというわけだ。紅梅にメジロの。

ちなみに色彩の慣用色名としての鶯色というのは、実際はかなりくすんだ黄緑(マンセル値は1GY 4.5/3.5)で、この画像のメジロの色より灰色が強い。

 

 この写真を撮った日の夜更け。もう明け方だったかもしれない。

夢枕に母親が出てきて、

 「どうして今年はこんなにたくさん梅の花が咲いたんだい」

と言った。

 「いや、去年と変わらんよ」

と返すと、

 そんなはずはないと、ぶつぶつ言いながら、くるりと背中を見せて消えた。

 

早朝から不吉に思える夢が少々気になって、

その日の午前中に母親に電話をした。すると母親が開口一番、なんで今年はあんなに咲いたのかと、同じことを言った。これはもうかなり驚いた。

 

ちなみに、夢枕に出てきたけど母親はちゃんと生きていて、今は離れたところに住んでいる。梅が満開なのを知っていたのは、既に連れ合いが梅の花の画像をメールで送っていたからだった。それにしても、夢に出てきて言ったことと同じことを実際の電話で言わんでもよかろうに。不思議が過ぎる。

母は、動物は嫌いだが、植物、特に花は好きなので梅が咲いたら梅を誉め、スミレが咲いたらスミレを誉める。特に小さな花が好きらしく、こじんまりと名前の知らない花が色を放っていると「かあいらしい花が咲いたな」

としみじみ言う。くどいようだが、野良猫は子猫も許すまじの人だ。

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 2月も半ば、少しずつ暖かくなってきたが、最高気温が10度を割る日もある。立春を過ぎてなお冬なれども早春ではある。この時期は「早春」と名付けたプレイリストを車でもヘッドホンでも流して春を待つ気持ちが高まる。

古い歌も入れている。

例えば『早春賦』…

 

  春は名のみの風の寒さや

  谷のうぐいす 歌は思えど

…えーと、このあとなんだったかとググってみると

 

  歌は思えど 時にあらずと声も立てず

…ありゃ、この季節、まだ鶯は歌わないのか。梅にウグイスはやはりイメージの世界のものかいな。

つまり

  早春というは「春まだき」ということである。

 

さて、御覧のとおり、ブログを真剣に始めることにしました。どなたがどう読んでくださるものかは知らないで書き散らしますが、ただ、目的の一つは三人の古い知人のためです。三人は、それぞれ別々の理由で外の世界と少しばかり隔たっていて、でもこのブログは読んでくれるそうなので。