路地裏の空

創作日記・乱調随筆

梅だより(壱)

梅一輪一輪ほどの暖かさ 服部嵐雪 

庭の梅がいくつかほころんだ一月二十日が大寒でした。
確かに一輪ほどには暖かさを感じますが、今週はまたシベリアの記録的寒波が巡ってくるそうな。

私の住んでいる町を流れる小さな川の岸辺には、かつて、たくさんの梅の木が植えられていました。春先には紅白の花をつけ、梅雨時になると沢山の実がなりました。中学生の頃は、梅雨の晴れ間には生徒総動員で収穫に出かけていたことを思い出します。午後になると1キロほど離れた川まで、ぞろぞろと歩いてでかけるのです。梅の木は両岸に何十本かあり、教室から持参したたくさんのバケツは、青緑の梅の実ですぐにいっぱいになりました。私たちは、わいわいと、あるいはブツブツと言いながら学校まで持ち帰るのです。正門で集められた梅の実はかなりの量だったかと。次の日、たくさんの青い梅の実が、近くの店先で売られていたのを見たけれど、あれが自分たちが採ったものかどうかはわからなかった。あの実は、おそらくどこかへ売られ梅干しや梅酒になり、その対価は学校の施設や備品の足しになったのだろう。そういえば学校の帰りに毎日書く連絡帳(日々の時間割や持参品、宿題などを書いていたノート)には、「梅の実」というタイトルがわざわざ印刷されていました。思えば、同窓の者にとっては特別な花木かもしれません。この町の家々にも梅の木は多く、散歩の途中に少しずつほころび始めた枝を見ます。

 

それでも

「春まだき(来)」

であります。